空は憂鬱になる程の快晴だ。集合場所の窓から外を眺めて、ジーンは深々と溜息を吐いた。梅雨前線はすでに跡形もなくなってしまった。もはや彼女たちを待っているのは殺人的な暑さだけなのだ。どうして先人たちは地球温暖化に真剣に対処しなかったのだろう。ジーンは心の底から今は亡きご先祖様達を呪った。

「賢くないご先祖様を持つと苦労するわ。そう思わない?ベッツィ」

ジーンは窓の外の恨めしい青空から視線を引き剥がし、振り向いた。本棚の背表紙を吟味していたエリザベスは、初めてジーンに気付いたかの様に目を瞠った。

「まあ、随分と悲観的なのね、ジーン」
「仕方ないでしょう、この天気ですもの」

ジーンは目の前に置いたカフェオレを覗き込む。両の掌で持っても、なお大きいカップの中で、大量のミルクと僅かばかりのコーヒーが混じり合い長閑な色合いを醸し出している。しかし、ジーンの心は晴れない。もう一度、大きな溜息が出た。
ジーンが作り出す鬱屈した部屋の雰囲気に、エリザベスはついに本の物色を諦めたらしい。フリル満載のスカートの裾を翻しながら、彼女はジーンの向かいに座った。そこには彼女が持ち込んだオレンジジュースが置いてある。

「こういう時にアルコールが飲めると、少しは気持ちが晴れるかもしれないわよ」
「でも、わたし達は飲めないわ」

顔を顰めてジーンは答えた。エリザベスが困った様に肩を竦めた。

「どうしたの、ジーン、今日の貴女は何だかとっても……疲れている様だわ」

実際、ジーンの顔色は冴えなかった。朝からそうだった。寝不足の顔だとエリザベスは感じていた。彼女は何気ない仕草でオレンジジュースを口元に運びながら、ジーンの返答を辛抱強く待った。思い詰めた様な表情でカフェオレを見つめるジーンに催促は禁物だとわかっていたからだ。
やがて、ついに沈黙に耐え切れなくなったジーンは小さく頭を振って、顔を上げた。

「ベッツィ、あなたには隠し事ができないわね」

そうでもないわよ、という一言をエリザベスは酸味の強いオレンジジュースと共に飲み込んだ。今日のジーンがおかしいことなど、仲間達全員、先刻お見通しで、知らぬは当人ばかりなり、なのだ。しかし、それを言えばジーンがショックを受けることは目に見えている。エリザベスは言葉の代わりに小首を傾げてみせた。

「そうね、わたし……少し疲れているのかも。昨夜もよく眠れなかったから」

ジーンはそれでも健気に微笑んだ。エリザベスに心配をかけてはいけないと思ったからだ。もっとも、強張った様な微笑にどれだけの説得力があったかは甚だ心許なかったが。

「あなたなら、相談に乗ってくれるかしら?ねぇ、ベッツィ……わたし、実はディームスにプロポーズされたのよ!」



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